ビーチコーミング, マーケット探訪, 石拾い, 鉱物

糸魚川翡翠探訪

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こんにちは。GOです。

糸魚川翡翠との出会いは偶然から始まり、紆余曲折を経て何とかスタート地点らしきものに辿り着いた。



富山県から新潟県のあたりの日本海沿岸に広がるヒスイが拾えるという”ヒスイ海岸”とのファーストコンタクトは、ただの行きすがらだった。従前からヒスイ海岸の事は耳に挟んでいたので、別件で近くを訪れた際に深く考えもせずに実際に現地を見てどんな感じの所かくらいは知っておこうと取り敢えず足を延ばしてみるかというくらいの軽い感覚だった。

当日は波が大荒れのタイミングだったということもあり、浜に立ち入ってのビーチコーミングで長居することもできず、滞在時間はほんの数分だった。聞きかじった情報をもとにそれらしいものを足早に拾い帰路についた。いつもながらヒスイの事をよく知らないので正しいものを拾えたかどうかも分からなかったが、ただの軽い気持ちの思い付きだったのでヒスイ海岸に辿り着けたことだけでも満足には比較的事足りたのであった。


押上のヒスイ海岸の看板


二回目のコンタクトは旅のついでで、目的は親不知への観光だった。

“子の行方、親不知らず”ということで、過去の日本海側の状況を良く表した地名であると思う。当時は日本海側を行く街道が整備されておらず波打ち際を進まざるを得ないような状況で、ちょっとした隙に子供が波に浚われるということが多々あったのだろう。今は第何世代目か分からないが崖の上の方の街道を荷物を満載した大型トラックがスイスイと行き交っている。

ところで、ヒスイを拾うことができる海岸の範囲は何となく調べていたのでこの親不知のあたりも該当していることは分かっていたが、延々と階段を下ったところにある親不知の海岸にごろごろと転がる石を見てみても相変わらずどれがヒスイなのかは分からなかった。

岩と小石の合間で少しだけ顔を出していた不思議な模様がついている緑色の石を見つけ気になったが、それがヒスイかどうかも分からず、旅のついでで探したということもあり埋もれている石を拾い上げることもしなかった。



その後、通りすがりに思い立ち、親不知ピアパークでヒスイの実物を見たり、パンフレットを貰ったりした。何となく海で拾えるヒスイの特徴を知ることができたが完全に経験不足で腑に落ちたという感覚はなかった。

そこでこの地域で拾える薬石やヒスイを使った勾玉の事も知った。知ったというよりは、どこか漠然と心のどこかで知っていたことを再確認するような感覚だった。また、ヒスイが産出するところは当然ながら主には山で、海以外にも川や山で拾えることがある事を知り、帰り際に思い立って、当てずっぽうに姫川の河原に立ち寄ってみたが、もちろんオケラだった。

道路の看板を見て、ヒスイの情報を得たり、拾った翡翠の鑑別をしてもらえるというフォッサマグナミュージアム(FMM)にも寄ってみようと思い立ったが、現地に到着した時間が営業終了間際となってしまい、何とかお願いしてお土産屋さんを見させていただくだけとなってしまった。


FMMことフォッサマグナミュージアム

その後、極度の疲労困憊だったこともあり、小谷の温泉に立ち寄って一休みしてから帰路についた。しかし、帰路の車の中で、そして、夜が明けても、あの不思議な模様の緑色の石が忘れられないという不思議な感覚に陥っていった。そんな心持ちの中、やっと重い腰をあげてヒスイのことについて少しづつ調べ始めたのであった。


三回目のコンタクトは、真夜中に思い立って出発し、忘れられないその不思議な模様の緑色の石を探しに親不知へ向かった時であった。何かにとり憑かれたような心境で、いてもたってもいられない不思議な感覚であった。その忘れられない緑色の石の結論としては、一部にヒスイを含む岩ということのようであった。

少しだけ細かく記すと、この地域の蓮華変性帯という地層のような部分からヒスイ輝石を伴って地上に出てきたと思われる変成岩の結晶片岩というものの様子と酷似していた。

親不知海岸でその不思議な模様の緑色の石を手に入れると、海岸沿いを北上しながら何かに突き動かされるかのように夢中で自己流の石拾い行脚をしていった。もちろん、正しいヒスイを拾えていたかどうかの確信はなく、相変わらずただの自己満足的な石拾いで終始していたと思うが、どういうわけかそれはそれで満足感があった。


礫が延々と広がる海岸の景色



その日最後に立ち寄った押上のヒスイ海岸では、前回新潟県を訪れた時から気になっていた姫川薬石を拾うことができた。薬石は、糸魚川翡翠に比べると分かりやすかった。

その日も毎度ながら過度の疲労を感じていたので、結局、その後に漠然と思い描いていたFMMに寄ることは断念し、いつもながら小谷の温泉のお湯で疲れを癒したのであった。温泉に浸かり少し疲れが和らぐと、やはり石拾いがしたいという思いが再び沸々と沸き上がり、再訪を心に誓ったのであった。


小石が多い押上の海岸


四回目のコンタクトでやっとゆっくりとFMMへ行くことができた。

その日も旅行のついでという意味合いがあったので、ヒスイ探しは短時間の朝日町の宮崎・境海岸のみとなった。短時間とは言え猛烈な暑さに疲れたので、次の目的地に向かう前に、朝日町の海岸を出たところで目に付いたこの地の名物らしきたら汁のお店で食事をとることにした。


富山湾とヒスイ海岸の看板



その日は、帰りにやっと念願のFMMにゆっくりと立ち寄ることができた。館内を一通り見学した後に、拾った石の中でそれらしいものを選んで無料鑑別をしていただくと、その中に一つだけひすい輝石岩があったということで、何だか嬉しい気持ちになった。レジャーの一環で立ち寄ったような家族連れからヒスイハンターのような雰囲気のプロっぽい風体の人までそれぞれの気持ちと石を胸に鑑別待ちの列に並んでいた。

今まで拾った石ころは確認することなく放置されていたので、本格的な科学的鑑別ではないにせよ、専門家に見ていただいたことで心の中の何かが一歩大きく前進したような気分になった。


ひすい輝石岩の判定カード


この日も大変疲れたので、漠然と目論んでいた川の調査は次回以降ということにして、お土産に翡翠を買い足すことにした。そのお店の人の話によると、糸魚川では分かりやすいイメージの緑色の翠の入った手ごろな価格の糸魚川翡翠は極端に少なくなり、トレンドは、黒っぽい黒翡翠や紫色のラベンダー翡翠に移ってきているということであった。

ひょっとこトレジャーハンターとしては、細かいことはよく分からないながらも、糸魚川界隈でロウカン質と言われる翡翠や緑色の翡翠、黒翡翠、ラベンダー翡翠、そして、オンファス輝石が主成分の厳密にはヒスイではない翡翠という少し複雑な事情のある黒翡翠などを探せばいいだろうなどと聞きかじった言葉だけを楽しく並べ、理解も浅いままに楽観的に考えて行動するのが常だった。

しかし、この糸魚川での翡翠探訪の頃を境に、糸魚川翡翠という曖昧な定義の言葉に気をとられながら、この漠然とした糸魚川翡翠とは本当はどういうものなのだろうか、本質的に世界で通用するヒスイというのはどういうものなのだろうか、また、大前提として本当に変わることのない価値のあるヒスイとはどういうものだろうかというようなことなど、少し細かいことに対して沸々と興味と疑問が湧いてくるのを感じ始めていた。



その後、小滝翡翠郷と明星山を見学し、いつもの小谷の温泉に立ち寄り、お湯で疲れを癒しながら次の糸魚川翡翠探訪を夢見る一方、併行して気づき始めていたある想いに向かい心が一歩前進している足音を感じていた。


この頃偶然手に入れた糸魚川翡翠の原石のかけら


糸魚川翡翠探訪を皮切りに、ひょっとこトレジャーハンターがうっかりと足を踏み入れてしまった翡翠がヒスイを呼ぶという底なし沼のこの続きとなるまだ見ぬストーリーは、少し趣を変え、もう少し大きな括りの翡翠探訪として新たなストーリーを本編に記録していきたいと心に温めている。

※節度を守り、地域の方々のご迷惑にならないようにご配慮をお願いします。